医療法第25条に基づく立入検査について

 医療法第25条に基づく立入検査については、国民に対して良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保するため、国及び都道府県の責務を果たすために設けられている権限で、以前は「医療監視」と呼ばれていました。

 この立入検査は、医療機関の法令遵守の状況等を確認し、必要に応じて行政指導や命令を行うことで、公衆衛生の保持を図ることを目的としています。埼玉県やさいたま市では、病院や有床診療所に対し、管轄の保健所が主体となって毎年実施しています。検査には医療法を担当する医療監視員を中心に、医師・薬剤師・獣医師・保健師・看護師・栄養士・臨床検査技師・診療放射線技師・精神保健福祉士などの専門職が医療監視員として、対象施設の規模に応じてチームを編成して臨みます。検査は主に「立入検査要綱」に基づいて書類確認やヒアリング等を行い、その検査結果を通知するとともに、必要に応じて改善を求めます。私が医療監視員の職務に当たっていた際には、重大な法令違反の指摘により医療機関の運営に大きな影響を及ぼした事例もあり、定期的な検査であっても慎重に対応すべきと考えます。

立入検査職員の身分証明書

 厚生労働省は毎年「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について」という通知により、各都道府県等にその年の重点事項等を示しています。検査を受ける医療機関は事前に内容を確認しておくことが有用です。なお、都道府県等が実施した立入検査の結果概要は、厚生労働省のホームページで公表されています。(ただし、詳細な結果までは確認できません。)

 また、このような定例的な立入検査のほか、医療機関の開設時に行われる現場確認や患者等から寄せられる苦情・通報・トラブルなども調査や立ち入りを行っています。これらは病院や有床診療所に限らず、医療機関全般を対象としており、事案に応じて柔軟な対応が求められています。

 ちなみに保健所の医務担当者は、病院や診療所のほかにも医療法の助産所や歯科技工士法の歯科技工所、あん摩マツサージ指圧師・はり師・きゆう師等に関する法律の施術所、柔道整復師法の施術所(名称的には整骨院や接骨院が多い)、臨床検査技師等に関する法律の衛生検査所なども、それぞれの法律に基づく立入検査等も行っています。

立入検査等に関する様々なホームページの情報について

 「行政指導は誤りだ」と断ずる専門家?のサイトを時折目にします。理由としては「法令に明文がない」「通知には書かれていない」から「根拠がない」という論法が多いようです。確かに行政指導そのものに法的拘束力はなく、行政手続法もその運用ルールを定めています。
 しかし、そもそも国の通知は一般に解釈・運用の指針(技術的助言)であって法令ではありません。医療法では一部を除き、実務を所管するのは都道府県などの自治体であり、行政指導を行うのも原則としてこれらの自治体です。よって「明文の根拠規定がないから誤りだ」と一刀両断するのは危うい姿勢と言えます。
 行政指導を受けた際は、その趣旨や根拠等を具体的に確認し、記録を残したうえで慎重に対応することが重要です。

 当事務所では専門的な知識と経験に基づき、保健所による新規開設時の検査、その他立入検査に対応するサポートや現場立ち会いも行います。 何かございましたら貴医療施設の代理人として所管庁との調整・報告等も可能ですので、まずは当事務所へご相談ください。

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