保険医療機関の指定取消しと保険医の登録取消しを理解するための基礎知識

 保険医療機関の指定及び保険医の登録は、日本の公的医療保険制度の根幹をなす仕組みであり、これにより、国民は質の確保された医療を安心して受けることができます。しかし、医療機関や保険医がその責任や義務を適切に果たさない場合、行政は指定や登録の取消しという厳しい措置を講じることがあります。これらの処分は、患者保護や制度への信頼維持を目的とする一方で、医療提供体制にとって極めて大きな影響を及ぼし得るため、慎重な判断と運用が求められます。

 保険医療機関や保険医には、保険診療のルール遵守が厳しく求められており、診療報酬の不正請求、重大な医療上の違法行為、社会的に重大な規範違反などが認められた場合には、厚生労働大臣による指定・登録の取消しが行われます。取消し処分を受けた場合、当該医療機関や保険医は保険診療を提供できなくなり、経済的損失だけでなく社会的信用の失墜という極めて重大な不利益を被ることになります。

 さらに、取消し処分は、当該医療機関や医師自身の信用回復を困難にするだけでなく、地域の医療供給体制にも影響し得る点で、極めて重い処分といえます。他方で、公的医療保険制度の信頼性を確保し、公的資金の適切な運用を守るためには不可欠な制度でもあります。適切な運用を通じて、患者の権利保護と医療現場の健全性維持を両立させることこそが、社会全体の利益の確保につながると考えられます。

 行政処分が行われる前に自ら登録抹消によって、行政処分から免れるようとするケースがであっても、取消に相当する場合には名称、氏名、不正理由、不正請求金額などが公表されることになっています。

保険医療機関指定・保険医登録の主な取消し事由
・保険医の責務規定に違反したとき
・診療報酬の不正請求があったとき
・命じられた報告をしないとき、虚偽の報告をしたとき
・求められた出頭に応ぜず、答弁せず、検査を拒み、妨げたとき
・保健医療に関する法令に基づく命令、処分に違反したとき
・保健医療に関する法令により罰金の刑に処せられ執行を終わらない場合
・拘禁刑以上の刑に処せられ執行を終わらない場合
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