医療広告規制の全体像と禁止事項を図解で整理

 医療広告規制は複雑ですが、その構造を整理すれば短時間で理解することができます。
 医療法およびガイドラインにより厳格に規制される医療広告について、本ページでは「広告該当性」「広告禁止事項」「広告可能事項」「可能事項の限定解除」の関係を図表で整理し、実務判断に直結する全体像を示します。

1 医療広告の規制アウトライン

 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、かつその質を事前に適切に判断することが極めて困難です。
 このため、患者等の利用者保護の観点から、医療広告は原則として禁止され、例外的に認められた事項のみが広告可能とされています。

 医療広告規制の基本構造は、次の三層で整理できます。
 すなわち、①原則禁止 ②広告可能事項(限定列挙)③一定の要件を満たした場合の限定解除という構造です。

 そもそも当該表示が「広告」に該当するかどうかは、「誘引性」と「特定性」によって判断されます。
 そのため「これは広告ではありません」等の記載があっても実質的に誘引性・特定性が認められる場合には、広告と判断される可能性があります。
  

医療広告規制の法令構成
医療広告規制の法令構成

2 医療広告の禁止事項

分  類違反事項備  考
直接罰の禁止広告・虚偽広告
・麻酔科広告の麻酔科医氏名併記の不足
法第6条の5、第6条の6、第6条の7
法第87条
その他の禁止広告・比較優良広告
・誇大広告
・公序良俗に反する内容の広告
・広告可能事項以外の広告
・患者等の治療効果等に関する体験談
・治療等の前後写真
法第6条の5、第6条の7
規則第1条の9
その他・品位を損ねる広告
・他法令等で禁止される広告
医薬品医療機器等法
健康増進法
景品表示法
不正競争防止法

3 広告可能事項

法第6条の5第3項平成19 年厚生労働省告示第108号
①医師・歯科医師である旨
②診療科名
③医療機関名、電話番号及び所在場所、管理者の氏名
④診療日・診療時間、予約診療の有無
⑤法令の指定を受けた医療機関・医師・歯科医師
⑥臨床研修等修了の認定
⑦地域医療連携推進法人の参加医療機関である旨
⑧入院設備の有無、病床種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数、施設、設備、従業者に関する事項
⑨診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他の当該医療従事者に関する事項であつて厚生労働大臣が定めるもの
⑩患者家族からの医療相談、医療安全確保、個人情報の取扱い、その他管理運営に関する事項
⑪紹介可能医療機関、保健医療サービス、福祉サービスの名称と施設、設備、器具の共同利用、連携に関する事項
⑫診療録その他診療諸記録の情報提供、退院後の療養に必要な事項の書面、その他医療に関する情報提供
⑬提供する医療内容(厚生労働大臣が定めるものに限る)
⑭患者の平均入院日数、平均外来患者、入院患者数、その他厚生労働大臣が定めるもの
⑮オンライン診療を行う旨と診療内容
⑯その他厚生労働大臣が定める事項
・診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職及び略歴
・日本専門医機構、日本歯科専門医機構が行う専門性に関する認定等
・診療報酬の算定方法に規定する検査、手術その他の治療の方法等
・当該医療機関で行われた手術の件数等
・健康保険医療機関、社会保険医療機関、船員保険医療機関、国民健康保険医療機関等
・健康診査、保健指導、健康相談、予防接種の実施
・薬機法に規定する治験に関する事項
・医療法人の付帯業務等
・患者の受診の便宜を図るためのサービス
・開設者に関する事項
・外部監査を受けている旨
・日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果
・日本医療機能評価機構が定める産科医療補償約款を定め補償を実施している旨
・日本適合性認定協会の認定を受けた審査登録機関に登録をしている旨
・保助看法に規定する特定行為を手順書により行う当該特定行為に係る業務の内容
・その他都道府県知事の定める事項
                                          ※助産師の業務(法第6条の7第3項)は省略

4 広告可能事項の限定解除

 上記3に掲載の医療法又は厚労省告示により広告が可能とされた事項以外については、規則第1条の9の2に規定する要件を全て満たした場合、そうした広告可能事項の限定を解除して広告することができる仕組みになっています。

要件1患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
要件2患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
要件3自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
要件4自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 なお、要件1についてはバナー広告や検索サイトで検索した際にスポンサーとして表示されるものや、検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは要件1を満たしたことになりませんので注意が必要です。

5 広告規制の判断フロー

 実務上の具体例については、医療広告等ガイドラインやガイドラインQ&A、医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書をご覧いただくと、修正の事例も記載がありますので参考にしてください。

6 指導・措置等

 厚生労働省は医業等に係るウェブサイトの監視指導体制強化として、平成 29 年度よりネットパトロールを委託事業により実施しています。メディアとしては、ウェブサイトのほかX、Instagram、YouTube、TikTokを監視対象としており、監視業務にはAIを 活用しています。
 令和7年度の対応状況は令和8年2月28日時点で「違反あり」1,842サイト、「改善・広告中止」1,238サイト、「改善・広告中止」14サイトとなっています。

 また、医療広告ガイドラインに基づく指導・措置等の実施手順として、監督官庁へ下記の図を示しています。

医療広告指導・措置等の実施手順書
出典:令和6年8月23日医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型について

7 行政処分・罰則

 上記のフロー図にあるとおり、市民等からの通報やネットパトロールからの情報提供などにより医療広告違反が発見された場合には、監督官庁の調査、是正措置の指導等が行われます。そして、それらの行政指導に従わず、医療広告違反が改善されない場合、最終的には行政処分刑事罰が科されるとともに、その事例は公表されるため、医療機関の経営に深刻な影響を及ぼすことになります。

行政処分・罰則内  容根拠法令
広告違反の是正命令等
医療広告が
・比較優良広告
・誇大広告
・公序良俗に反する内容の広告
・広告可能事項以外の広告
・患者の治療効果等の体験談
・治療等の前後写真
等の規定に違反している場合
法第6条の8第2項
管理者変更命令医療機関の管理者に、犯罪若しくは医事に関する不正行為があり又は管理をなすのに適しないと認めるとき法第28条
許可取消・閉鎖命令管理者変更命令に違反したとき、開設者に犯罪又は医事に関する不正の行為があったとき法第29条
六月以下の拘禁刑
又は
三十万円以下の罰金
医療広告が
・虚偽広告
・麻酔科広告の麻酔科医名の併記
の規定に違反した者、広告違反の是正命令又は処分に違反した者
法第87条第1号
二十万円以下の罰金医療広告違反の調査に関する報告や提出を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は当該職員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者法第89条第2号

 医療広告は一つの表現の違いがリスクに直結する分野です。
 だからこそ、全体構造を押さえたうえで、個別判断を積み重ねていくことが、適切な情報発信とリスク回避の両立につながります。

 当事務所では専門的な知識と経験に基づき、監督官庁の各種調査、その他立入検査等に対応する サポートや現場立ち会いも行います。何かございましたら貴施設の代理人として所管庁との調整・ 報告等も可能ですので、まずは当事務所へご相談ください。

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