平成19年以前に設立した医療法人のほとんどは、法人設立時の出資持分がある経過措置型医療法人となっています。
制度が改正された背景としては「持分」という財産権により、出資社員の相続等による課税額や法人への払戻請求額が巨額となり、医業の安定的継続に対して将来的なリスクがあることなどが挙げられます。これまでに出資持分の払戻請求では、複数の裁判例があり、なかでも平成22年の最高裁判例において、その時点の法人の財産評価額に出資割合を乗じて払戻額が算定されることが確認されました。設立時と比べて純資産額が増加している医療法人は特に注意が必要です。
法改正以降に設立する医療法人に持分はありませんが、改正前の持分あり医療法人がこの問題を放置することにより、医療法人の存続にリスクがあることなどから、国では法改正とともに持分なし医療法人への移行を円滑に進めるため相続税、贈与税の税制優遇措置などを盛り込んだ認定医療法人制度を導入しました。
持分なし医療法人に係る移行計画の認定期限は、当初の令和2年9月30日までの3年間から、日本医師会の要望等により令和5年9月30日、令和8年12月31日に延長がされています。
持分を放棄すると医療法人の運営ができなくなる、相続が発生したら考える、などの考え方には誤解もあります。また、法人によっては認定要件に高いハードルがあるかもしれません。しかし、だから検討する必要はない、というのは本当に最善な判断でしょうか?事業承継を考えるのであれば、ぜひ長期的な視点で計画的にお考えください。その際、個人としての相続・遺産分割も併せて考慮が必要です。
まずは現在の状況等を把握し、是非この機会に制度(税制優遇措置)の活用と、安定的に医療法人を運営することをご検討ください。